輾転反側てんてんはんそく)” の例文
正月が来たけれど、喪中もちゅうだった。三日をヒッソリ暮して、四日の御用始めに出勤した小室君は俄に腹痛を催して、輾転反側てんてんはんそくした。
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
夫に対する愛と憎の輾転反側てんてんはんそくが伸子の心にまた力を盛りかえした。彼女はどこにいても苦しかった。それ故どこにか心の休憩所を欲して動きまわる。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
しかし、この救済は、いたずらにうろうろするだけで、ワナにかかった一方の貉の煩悶はんもんを救うことも、束縛を解放してやることもできないのです——二つ相抱いて周章狼狽、輾転反側てんてんはんそくしている。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こうしていらいらしながら七日の間、いろいろのことを考えながら輾転反側てんてんはんそくしているうちに、かえって私の肉体は日増しに丈夫になっていって、寝室の鏡にうつしてみても平常と変わりがなく
私も疲れたからだをやっと蒲団ふとんに横たえましたが、どんなに私が輾転反側てんてんはんそくしてその夜一晩、まんじりともせずに夜を明かしたかは、もう先生、貴方あなたにも想像していただけるであろうと思います。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
無意識に輾転反側てんてんはんそくした。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
輾転反側てんてんはんそく明方あけがたまでまんじりともしない。そこで或晩丹波さんへ行ってつぶさに容態を訴えると
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)