軍鶏籠とうまるかご)” の例文
旧字:軍鷄籠
息をあえぎながら見廻すと、ゆうべの宿、青砥屋あおとやを立って来た東儀与力以下の人々と軍鶏籠とうまるかごとが、列をつくって、眼の前をふさいでいた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……軍鶏籠とうまるかごの胴中へ白刃を一本さしこんでおいて、それを、こっちから向うへ抜けるんですが、あのくらいの芸があれば、今晩のようなことはわけなくやってのけるでしょう……してみりゃア
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
黙々と、警固の行列について歩いてゆくに、彼は、塙郁次郎の軍鶏籠とうまるかごを見つめて、この時初めて、怖ろしい大難関にぶつかったのであった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わずかな間に、げっそりと衰えた塙郁次郎は、やがて、軍鶏籠とうまるかごの人となった。警固は、二十人余りの捕手とりて
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
解毒げどくまされて体がなおると、猶予ゆうよなく、おきまりの軍鶏籠とうまるかごに乗せられて、甲府表から江戸町奉行へ差立てになり、阿弥陀あみだ街道から笹子、小仏を揺られて来ました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女も、相応な覚悟はきめて、軍鶏籠とうまるかごの中ではすこぶる神妙に返っておりましたが、夜中、江戸表へ着いたと思うと、意外にも、自分はこの観音堂裏の桐畑のうちに運ばれて
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軍鶏籠とうまるかごが、永代橋へかかるころから、差立ての列は、そこらに、群れをなしていた立ン坊だの、屑屋だの、軽子だの、乞食だの、まるで生ける餓鬼草紙がきぞうしみたいな、臭い人種に囲まれて
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここは、深川の御船蔵おふなぐら。その中にある仮牢だ。仲間のいたちだの、小猿だのが、皆、ケチな兇状につまずいて、東海道筋から軍鶏籠とうまるかごで、江戸へ差立てになったと聞き、役人への反抗と、仲間の面当てに
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)