躊躇たゆた)” の例文
浮世の渡りぐるしき事など思ひめぐらせば思ひ廻すほど嬉しからず、時刻になりて食ふ飯の味が今更かはれるではなけれど、箸持つ手さへ躊躇たゆたひ勝にて舌が美味うまうは受けとらぬに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
病めるものは之を慰め、貧しきものは之を分ち、心曲こゝろまがりて郷里の害を爲すものには因果應報の道理をさとし、すべて人の爲め世の爲めに益あることは躊躇たゆたふことなくし、絶えて彼此かれこれ差別しやべつなし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
と云われて、お勢は少し躊躇たゆたッたが、狼狽うろたえて、「い……いやなこッた」。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
不思議に海は躊躇たゆたうて
わがひとに与ふる哀歌 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
浮世の渡りぐるしきことなど思いめぐらせば思い廻らすほどうれしからず、時刻になりて食う飯の味が今さらかわれるではなけれど、はし持つ手さえ躊躇たゆたいがちにて舌が美味うもうは受けとらぬに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)