蹶起けつき)” の例文
けれども、肥えた白足袋の説明者なぞは、さうした大衆の蹶起けつきは、自分たちの指一本でなされたものと、自分たちの力を誇張して考へてゐる。
日本三文オペラ (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
然らずんば奸臣てうに満ち、乾綱けんかうひもを解き、内憂外患こも/″\至り、かの衰亡の幕府とえらぶなきに至らむ。於是乎こゝにおいてか、憂国之士、奮然蹶起けつきして、奸邪を芟夷さんいし、孑遺げつゐなきを期すべし。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
地平線には小き稻妻亂れ起りて、暗碧なる浪のさきなる雪花はほの/″\と白み來れり。彼女は俄に蹶起けつきして、舟はかしこにと呼べり。われ等はその指す方に一の黒點あるを認め得たり。