こご)” の例文
漸っとそれが蝙蝠傘こうもりがさの下で、或る小さな灌木かんぼくの上に気づかわしげに身をこごめている、西洋人らしいことが私には分かり出した。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そう伯父に言われた繁はすこし身をこごめて薄笑いした。次郎がそこへ飛んで来た。次郎は父や叔父の見物のあるのを何よりよろこばしそうにして、いきなり繁に組付いた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
而もスタイルの舊い古ぼけた外套オバーコートを着てゐるのと、何樣な場合にも頭を垂れてゐるのと、少し腰をこごめて歩くのが、學士の風采の特徴で、學生間には「蚊とんぼ」といふ渾名あだなが付けてある。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
私も歩き出しながら、やっとその野薔薇の小さなしげみの前に達した。そうして今しがたその人のしていたようなむつかしい姿勢を真似まねながら、その上に身をこごめてみた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
私は注意深く歩き続けながら、順ぐりにいくつかの野薔薇の木とすれちがって行ったが、とうとう私はいつかレエノルズ博士がその上に身をこごめていた一つの茂みの前まで来た。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)