足手纏あしでまと)” の例文
これでいい、月賦の自動車は引き上げられそうだし、店は倒れかかっているし、夜逃げにはあつらえ向きだ。足手纏あしでまといになると思っていたみのりは自分から片を
宝石の序曲 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「せがれどもは、甲斐へ落ちのびましたが、年老としよりが連れでは、足手纏あしでまといになろうと思い、別れて、この走り湯権現の房へ、きょうの明け方隠れこみました」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酉刻むつ少し過ぎかな、窓から覗いて居る五郎助の顏を見て『これは女が居ちや、足手纏あしでまとひになるかも知れない』
自分には足手纏あしでまといの子供のあることや、長いあいだ亭主にしいたげられて来たことが、つくづく考えられた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
手放せないのももっともと思われる節もないではないが——今後もこういう場合を予想すれば、長い旅路の足手纏あしでまといが思いやられる。いっそ、預けて置いて出かけちゃどうだ
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わし達、武人にとっては、あんな贔屓ひいきは、かえって有難迷惑、また、足手纏あしでまといというものだ。殿をお会わせするなどという事は、盛綱は、止めたがよいと存ずる。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「筑前どのが、直ちに、京都へ攻め上られるため、われらの如きは、足手纏あしでまといと思し召されたのでしょう。急に、お暇を下されたので、早々立ち帰って来たわけでございまする」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
共にするまでの覚悟のない者はむしろ足手纏あしでまといだ。坂本にはなお光春様あり、三千の精鋭がある。ただただ、そこへ行き着くまでの御無事こそねがわしい。あわれ御主君のうえに、神助あらせ給え
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)