赤裸せきら)” の例文
それではこれらの言葉で事実何が意味されているかを赤裸せきらに透見すると、実は迷信と神話と呪術と大差のないことが多いのである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
幻想の心臓の中に、忽然、赤裸せきらの男性を見出した彼女は、死ぬかと思うほどなおどろきに打たれた。悲しくて悲しくてならなかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女人の誇りを、恋人の前でまで、赤裸せきらに投捨てられないものの恋は、かなしいが当然で、彼女は自ら火をけたほのおを、自らの冷たさをもって消そうと争った。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
沢になって小流れがあるところの岩と水の間を、無雑作むぞうさに掘りひろげて、その中に赤裸せきらな人間が七つばかり、すっぽりとつかっている。しかも、それがみんな年の若い女ばかりでした。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
多くの人間は自己に関する赤裸せきらの真実を知ることを欲しないし、知ってもそこから突きつめた推理はやらない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
赤裸せきらな慾情にひたっている行状どおり、何の虚飾なく、桎梏しっこくなく、ただの人間という以外の何者でもなく、考えたいように自由に考えてみた自己の結着というものである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤裸せきらな人間の愛の真実の前に、他の一切を忘れて有頂天うちょうてんになったとしても無理もなく、論理的の立場から見ても、その結婚が全然第三者の意志によって強制されたものであるから
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)