ニヘ)” の例文
神と、其祭りの為の「ニヘ」として飼はれてゐる動物と、氏人と、此三つの対立の中、生け贄になる動物を、軽く見てはならない。
信太妻の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
くましろ又はくましねとニヘとの間に、さしたる差別を立て得ぬ私には、茲にまた、別途の仮定に結び附く契機を得た様な気がする。
稲むらの蔭にて (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
にへは神及び神なる人の天子の食物の總稱なる「ニヘ」と一つ語であつて、刈り上げの穀物をクウずる所作をこめて表す方に分化してゐる。
にへはニヘで、動物質に限らず、植物性の食ひ物にも通じる。神と天子とに限つて言ふ語。贄すは、早稲の初穂を飯にして献る事。
まれびとの歴史 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
異郷の者が来て、贄なり裹物ツトなりを献げて還る古代生活の印象が結びついて、水界から献つた富みの喪失を、単に魚のニヘを失うた最低限度に止めさせたのである。
河童の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
河童が離れて、ある家の富みが失はれた形を、一部分失うた事に止めてゐるのが、魚のニヘの来なくなつた話である。家の中に懸けられる物は、魚も一つのタカラである。
河童の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
謂はゞ此は、神輿洗ひであり、麓川のニヘを献る事を職として居たものであつたらしいのである。
村々の祭り (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
にほとりの 葛飾早稲カツシカワセニヘすとも、カナしきを、に立てめやも(万葉集巻十四)
古代生活に見えた恋愛 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
此早稲の飯も、やはりニヘである。
村々の祭り (新字旧仮名) / 折口信夫(著)