さかずき)” の例文
俺の理性が頼れうるものならば——余は酒樽の冠を被り樫の大いなるさかずきを捧げ奉つて、ロンサルの如くたちどころに神に下落するぞよ。
餐宴もすでに終らんとする時、キイツは突然さかずきをあげて、「ニュートンの想い出よ災いあれ」といって乾杯せんことを提議する。
近代美の研究 (新字新仮名) / 中井正一(著)
王はさかずきをあげて竇に酒を勧めたが、竇の目はその方にいかなかった。王はかすかに竇の気持ちを察したようであった。そこで王がいった。
蓮花公主 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
一つ二つと三十ばかりかぞうると、取り下ろして、ぐっと一気に飲みした。やわらかな天水である。二たび三たび興に乗じて此大さかずきを重ねた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そこで旅装を調ととのえ、日を期して出発することになり、中堂に酒を置いて、母親と愛卿の三人で別れのさかずきをあげた。
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
丹羽、内藤、岡ノ三士及ビ僧円桓えんかんモマタついデ至ル。談ヲほしいままニシテさかずきバス。時ニ泥江豊原生トはかリ余ノタメニ舟ヲ堀川ニス。毅堂曰ク藩禁アリ舟ヲ同ジクスルヲ得ズ。君カツ留レト。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
磊落にして豪放、訪客の絶えざる時は数年といへどもさかずきを持して不眠といふから凄いものだ。尊厳な弁護士・椋原孔明氏とは莫逆の友であつた。ああ、また何をか言はんや。
公子はまた女に言いつけて大きなさかずきに酒をつがした。
嬌娜 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)