角屋かどや)” の例文
幽暗なる蝋燭の火影に窺ひ見た島原の遊女の姿と、角屋かどやの座敷の繪襖とは、二十世紀の世界にはあらうとも思はれぬ神祕の極みであつた。
十年振:一名京都紀行 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
「そうか、大抵たいてい大丈夫だいじょうぶだろう。それで赤シャツは人にかくれて、温泉の町の角屋かどやへ行って、芸者と会見するそうだ」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
角十の主人、角屋かどや十兵衛が中津川からやって来て、伏見屋の金兵衛にその仲裁を頼んだこともわかった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
角屋かどや昼食ひるしょくをして、余程おくれました。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
角屋かどや、貴様も好きだとみえるな」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
峠村の牛行司うしぎょうじで利三郎と言えば、彼には忘れられない男の名だ。かつて牛方事件の張本人として、中津川の旧問屋角屋かどや十兵衛を相手に血戦を開いたことのある男だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「酒屋? 石和屋いさわや角屋かどやか」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万屋安兵衛よろずややすべえ大和屋李助やまとやりすけ、その他、一時は下海道辺の問屋から今渡いまどの問屋仲間を相手にこの界隈かいわいの入り荷出荷でにとも一手に引き受けて牛方事件の紛争まで引き起こした旧問屋角屋かどや十兵衛の店などは
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「へい、角屋かどやのもので」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)