うかが)” の例文
灯影ひかげは縁を照らして、跫音あしおとは近づけり。白糸はひたと雨戸に身を寄せて、何者か来たるとうかがいぬ。この家の内儀なるべし。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
家慈輿中よちゅうヨリコレヲうかがツテ欷歔ききょス。小弟ふところニアリ呱呱ここ乳ヲもとム。余モマタ家慈ニ向ツテしきり阿爺あやまみユルコトいずれノ日ニアルヤヲ問フ。シカモソノ幽囚ニアルヲ知ラザル也。至レバすなわチ老屋一宇。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
とみには返すことばもなくて、白糸はかしられたりしが、やがて馭者のおもてを見るがごとく見ざるがごとくうかがいつつ
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
談ここにいたりて、甲と乙とは、思わず同音にうめきぬ。乗り合いは弁者の顔をうかがいて、その後段を渇望せり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)