補綴ほてい)” の例文
筋は無論、翁から割当てられたもので、自分たち二人はほとんどその口授のままを補綴ほていしたに過ぎなかった。劇場は後の宮戸座みやとざであった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もとより素人経師しろうときょうじだが手際が凡ならず、しきりにかきあつめた小美術品の補綴ほてい修理を、自分の手にかけて、あれよこれよと繕いに余念がない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
『聖武記』の始めて成ったのは道光二十三年であるが、二年の後補綴ほていせられ更に二十六年に至ってまた増訂せられた。道光二十六年はすなわちわが弘化三年である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
三度の食事も覚束おぼつかなき農民の婦女子に横文の素読を教えて何の益をなすべきや。嫁しては主夫の襤褸ぼろ補綴ほていする貧寒女子へ英の読本を教えて後世何の益あるべきや。
文明教育論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そう云う訳なので、以下の話には幸子の補綴ほていと解釈とが加わっているのである。———
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
四座連盟はもろくも切り崩されたのである。新開場の狂言は黙阿弥もくあみ作の「黄門記童幼講釈こうもんきおさなこうしゃく」を福地桜痴ふくちおうち居士が補綴ほていした物で、名題は「俗説美談黄門記」とえられた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「二十五日。雨。太田原ノ駅ニ飯シ鍋懸ニ憩ヒ越堀駅ニ宿ス。コノ際平岡漫嶺断続シテ相連リ原野ソノ間ヲ補綴ほていス。弥〻いよいよ望ムニ黄茅白葦こうぼうはくいナルハイハユル那須なすノ原ナリ。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
信仰者が、逆らわずに補綴ほていを加えようとするのを、懐疑者は立ちどころにハネ飛ばして
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)