袈裟衣けさごろも)” の例文
のみならず、形ばかりの袈裟衣けさごろもをつけた坊さんが一枚、特志を以てその介添に加わって、何かと世話をやいてござる。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お寺の中へみ入って、寺中の坊さんたちの袈裟衣けさごろもや、本堂の仏像、舎利塔などを担ぎ出して、我がちに得物とする。
それが、今では、まだ年というほどでもないのに、老僧のようにやせ衰え、色黒々と骨筋が張って、濃い墨染一色の袈裟衣けさごろもという簡素ないで立ちであった。
その時に袈裟衣けさごろもの老僧が、やおら立ち上って——その袈裟衣を見ると、これはたしかに日蓮宗に属する寺の坊さんだ。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鼠色の、ずいぶん雨風を浴びた袈裟衣けさごろもをかけて、帽子を被り珠数じゅずを手首にかけながら、少しく前こごみになって、あまり高い音声ではないが、よくとおる声で
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
和尚は錫杖しゃくじょうをついて、笠をかぶり、袈裟衣けさごろも草鞋わらじ穿こうとして式台に腰をかけているところを、郁太郎を背負っている与八が、ひざまずいてうやうやしくその草鞋の紐を結んでやりますと
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)