衿足えりあし)” の例文
彼は眼の前に坐っている妻の、固い非人情な身構えや、陶器のように冷たい衿足えりあしを見ながら、ふとそれを従妹のみちと置き替えていた。
山椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
髪を奇麗に分けた、衿足えりあしの白い運転手が
泣虫小僧 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
部屋へ戻ると藤尾はすっかり身じまいを済ませ、掻きあげた涼しい衿足えりあしをこっちへ向けて、窓からじっと雨の谷川を見ていた。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
紫色の地に菊の模様を散らした小袖が、色の白い顔によく似合い、少し衣紋をぬいた衿足えりあしの、なめらかに脂肪を包んだ肌が、吸いつきたいほどなまめかしく思えた。
雪と泥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
母が釜戸かまどへ立っていた、弥之助はお八重の衿足えりあしにつよく眼をひかれた、二年のあいだにすっかり娘らしくなっている、そういう艱難かんなんな生活にいためられながら、若い命はいささかのためらいもなく
蜆谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)