衆目しゅうもく)” の例文
が、近江之介は、さわぎ立つ番衆を振り切って、もう部屋を出かかっていた。こっちから仕向けた争いであることは、衆目しゅうもくの見たところである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
で——宅助は、初めて自分が、衆目しゅうもくの中にいることを知って、思いだしたように、とつぜん、一同へお辞儀をした。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その犯人がどこからか糸をあやつって、この事件に関するあらゆる不思議な現象を自由自在にもてあそびつつ衆目しゅうもくくらましているに違いない……と初めからきめてかかっているのに対して
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
海女といっても、お松、お村は、室内の水槽で芸をするように育って、陽にも潮にも焼けず、小屋の空気が匂うばかりの白い肌を、何の惜し気もなく衆目しゅうもくにさらして、水槽のふちちました。
衆目しゅうもくの中に置かれた、ただ一つの石のように、お袖は、何一つ答えもせず、何の表情も見せなかった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(どうだ、寝返って、羽柴筑前どのに、加担かたんしないか。衆目しゅうもくの見るところ、十指のたとえ。秀吉公の将来と、信雄卿の将来とでは、比較にならぬ。いまが、考えどきだぞよ)
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
衆目しゅうもく、それに異議いぎはなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)