ばった)” の例文
「その卑屈癖ひくつぐせがいかんのう。よせ、よせ、米つきばったのような癖は。第一、そういじけては、碁がおもしろうなくなる」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半瓦は、そういうと、逃げかけるちんばの襟がみをつまんで、ばったでも叩きつけるように、空地の方へほうり出した。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど、土用の太陽は、曠野こうやの真上にあって、火車のようにけていた。水に濡れたままの兵や駒は、縦隊を作ってうねって来た。キチキチキチ……と青いばったが信長の姿に飛び交う。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分をつつむ世の嘲罵ちょうば悪声を、彼は、知らないではなかった。身をめぐってキチキチ飛ぶばったのように聞いていた。——けれど、涼風すずかぜ懐中ふところれながら聞いていれば、それも気にはさわらない。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)