蛭巻ひるまき)” の例文
旧字:蛭卷
右手めて直槍すぐやりの穂には、生々しくしたたるものが蛭巻ひるまきまで血ぬられ、装束の片袖は、敵の太刀に斬り裂かれて、鎖肌着の肩が出ている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清盛は枕もとから銀の蛭巻ひるまきをした小長刀こなぎなたを離さず、常に寝所に守り刀として置いていたが、ある夜急に消えた。盗まれたかと八方調べたが行方が知れぬ。
まだ蛭巻ひるまきぐらいの位置に当る、平ッたい鞍状地に到着した、槍から無残に崩壊した岩は、洪水のように汎濫している、そうしてこれが巨大なる槍ヶ岳を、目の上に高く聳えしむるために
槍ヶ岳第三回登山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
両の手に持った椀を合せて槍の蛭巻ひるまきをグッと挟んでしまいました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
蛭巻ひるまきの辺まで突っこんで見せる。ハッハッハッ、ご所望次第!
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一方の槍は天堂の気合とともに走って、つづらの横を突き破り、深さ蛭巻ひるまきなかばまで入った。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と銀の蛭巻ひるまきした小長刀を枕辺に置いて、姿を消した。気がついてみるとそれは夢であったが、枕元をみると確かに、その小長刀が置かれていた。その後再び大明神のご託宣があり
と、いうと、槍の蛭巻ひるまきから、斬って落していた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)