みずち)” の例文
蛇は水の中で棲息しないが、みずちみずちは水中に棲む。土の底に虬がいるといったりする。また日本人はよく間違えて、大蛇も水の底にいるようにいう。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
古沼にみずちが泳いでいるよ。ご覧よ、ひょうを追っかけて裸体はだかの人間が走って行くから。おおとうとう追い付いた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
このとき長さ三丈とも見える大きいみずちがあらわれて、身をめぐらして此の家を護った。
その日になると、関羽は、緑の戦袍せんぽうを着、盛冠花鬚せいかんかびん、一きわ装って小舟にのった。供の周倉は、面はみずちのごとく青く、唇は牙をあらわし、腕は千斤も吊るべしと思われる鉄色の肌をしている。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでも自分の生んだ物であるので、娘は憐れみいつくしんで、かれらを行水ぎょうずいたらいのなかに養って置くと、三月ほどの後にだんだん大きくなって、それがみずちの子であることが判った。
馬絆といい、馬黄精といい、いずれもみずちの種類であるらしい。(遂昌雑録)
穴は深く暗く、その奥にみずち蟒蛇うわばみのようなものがわだかまっていて、寄り付かれないほどになまぐさかった。やがて蟒蛇はかねのような両眼をひらくと、その光りはさながら人をとろかすように輝いた。