藁半紙わらばんし)” の例文
とベタ一面に鉛筆を走らせた藁半紙わらばんしを署長の鼻先につきつけたのは、もうとっくに帰ったものとばかり思っていたK新報社長の田熊だった。
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
確か小学校の二、三年生のころ、僕らの先生は僕らの机に耳の青い藁半紙わらばんしを配り、それへ「かわいと思うもの」と「美しいと思うもの」とを書けと言った。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私、いま、自らすすんで、君がかなしき藁半紙わらばんしに、わが心臓つかみ出したる詩を、しるさむ。私、めったの人には断じて見せなかった未発表の大事の詩一篇。
寝ながら藁半紙わらばんしのやうな原稿紙を拡げて、富岡は、うるしに就いての随筆を書いてゐた。南の思ひ出は、これすべて、只、記憶の海を航海してゐるやうなものである。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
当時既に日本は断末魔の境にあり、この本なども、ぼろぼろの藁半紙わらばんしのような紙に印刷されているまことに粗末な本であるが、これは私にとっては、大切な本の一つである。
島津斉彬公 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
彼は署長の手帖の中身をスッカリ藁半紙わらばんしに書き写してしまってから、激しい地声じごえでまくし立てた。
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)