蒼鷺あおさぎ)” の例文
広い芝生の庭も、林のような樹立も、築山も、しゃをとおして見るように緑ひと色に濡れていた。ときどき泉池で鯉のはねる音がし樹立のなかで蒼鷺あおさぎの鳴く声が聞える。
半之助祝言 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「せっかくかかった蒼鷺あおさぎめにうまく逃げられたのを恥じたと見え、弦を離れた矢のように真一文字に空をけ、そのまま姿を見失ったからは二度と帰ることはありますまい」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
風の音、蘆の音、水の音、——それからどこかでけたたましく、蒼鷺あおさぎの啼く声がした。と思って立止ると、いつか潮がさし出したと見えて、黄泥こうでいを洗う水の色が、さっきよりは間近に光っている。
尾生の信 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)