荷担にな)” の例文
旧字:荷擔
上人皺枯れたる御声にて、これ十兵衛よ、思う存分し遂げて見い、よう仕上らば嬉しいぞよ、と荷担になうに余る冥加みょうがのお言葉。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と、小屋のうしろから、二つの水桶を荷担になって、河原のほうへ立去ってゆくのを、介三郎と石権は、いま気がついたように振向いて見ていた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
和歌はすでに四百年の伝統を荷担になった貴紳文芸である。この文芸に打ちこんでいった実朝の愛は、あるいは都の人たちの思い知らぬほどに一途いちずで清純なものであったろうとも思う。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
勘太は、湊川から、荷担にないの水桶で、何度も河水かわみずを汲んで来た。たわしで碑を洗いあげるのだった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神代この方の皇統を後に荷担になわれた上皇の自覚には、鎌倉幕府の権力の生長が、まざまざと影を映しつつあったであろう。藤氏擅権とうしせんけんの極において、後三条院のお心に院政の基をなす自覚がめばえた。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
往来の人とぶつかっても気がつかない、輿こし荷担になってくる舎人とねりに呶鳴られても気がつかない、物売りの女が怪しんで、気狂きちがいらしいと指さして笑っているのも気がつかない……。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だめだめ。おまえとわしとでは、荷担にないの寸法が違い過ぎるよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)