草雲雀くさひばり)” の例文
そんなことを云うと、虫屋さんに憎まれるかも知れませんが、松虫や草雲雀くさひばりのたぐいは値が高いばかりで、どうも江戸らしくありませんね。
半七捕物帳:07 奥女中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
桑畑で草雲雀くさひばりが小さな銀鈴を鳴らすような涼しい声を振り立てる。伊吹スズが時々テヤテヤテヤテヤリリーと浮かれ調子で混っ返している。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「人間に生れることばかりが、必ずしも幸福ではない」と、草雲雀くさひばりに就てそんなことを或る詩人が言つた。
草葉ですだく虫には種々いろ/\有りまするが一緒にいて居りますると、いずれが鈴虫か、松虫か、機織はたおりか、草雲雀くさひばりか、とんと分りませんけれども、余念を去って沈着おちついて聞きますと分りますから
草雲雀くさひばり
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夏は草雲雀くさひばりの楽しい住家であった桑の葉が、人の跫音あしおとにもかさかさと音がして、脆くも落ち散ってしまった桑畑の上に、遠近の山が鮮かに望まれる日が多くなると
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
その混雑のあいだに一軒の虫売りが市松障子いちまつしょうじの家台をおろしている。松虫、鈴虫、草雲雀くさひばりのたぐいが掛行燈かけあんどうの下に声をそろえて鳴く。ガチャガチャ虫がひときわ高く鳴き立てている。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)