苦茗くめい)” の例文
花好きな沢庵——彼は殊に、清冽な梅花を愛した——は、花信を得るごとにこの老友を訪れて、共に苦茗くめいすすり、尽きざる閑談に時を忘れた。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
禅房の一室夜いたくも更け渡りて孤燈沈々たる時、我ひとり冷えたる苦茗くめいすすつて、苦吟又苦吟、額に汗を覚ゆる惨憺の有様を、最も同情ある顔付して柱の上より見守りたるもこの帽子なり。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ゆっくり、苦茗くめいをすすり
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
次席老中太田備中守おおたびっちゅうのかみは、幸いに、もう書院に出て、朝の苦茗くめいをすすっていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しずかに苦茗くめいをすすって
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)