船影せんえい)” の例文
難破船があるという無電によって、人命じんめいをすくうため現場までいってみれば、それらしい船影せんえいはなくて、あの不吉な黒リボンの花輪が漂っていた。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
兵庫島へ着いた兵船も多かったが、うち二百余そうの船影せんえいは、足利方の陣を横にみながら官軍方の旌旗せいきをさがして西の宮の南へ着け、ただちに兵をあげて、義貞の指揮のもとに就いたのだった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帆村は、時間とともに、だんだんとおくまでのびていく視界のひろがりに元気づきながら、どこかに行きすがりの船影せんえいでもないかと、やすみなく首を左右前後にまわした。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「本船は予定したる時刻においてクイーン・メリー号に遭遇そうぐうせず、さらにその時刻の前後においても遭遇せず。ついに船影せんえいすらもみとめざりき。海上は風やや強きも難航なんこうの程度にあらず」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)