舵機だき)” の例文
「ほらこの前の航海ね。室蘭を出帆する日からしてえらい暴化しけだったろう。あの航海に、舵機だきの鎖とカバーの間に食い込まれたんだよ」
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
コンパスは狂いつづけ、舵機だきや、スクリウは、僕の命令に従わない。僕は、把手ハンドルから手を離し、呆然ぼうぜんとして腕組みした。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
確実にその大檣を砕き舵機だきを損ぜしめ前部砲塔を白煙のうちに包ましめたのは分っていたが、あいにくにも迫り来った薄暮に災されてついに艦影を逸し
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
舵機だきを修理したらしいところ、また機体のところにペンキのぬりかえられているところから見て、これが例の、青江三空曹の生命をうばった恨みの怪塔ロケットであると思われました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、静かに顔をめぐらして、岩城いわしろの明かりを、もの欲しげに見やるのだったが、その時、軍船の舵機だきが物のみごとに破壊された。新しい囚虜とりこを得た、歓呼の鯨波ときが、ドッといっせいに挙がる。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
私は心構えしながら舵機だきをシッカリと握り締めた。
怪夢 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ハールポール」と船長は、舵機だきをあやつっている小倉の前へ来て、飛び上がりざま叫んだ。その声は絶望的にブリッジに響きわたった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
機関エンジンをうんとかけて、渦巻の反対の方向へ舵機だきを廻したら、少しは、急速度な回転を緩めることは出来ませんか」
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
舵機だきをねらえ。こっちの車輪で、あの舵機をちらせ」
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自動車の運転手がそのハンドルを絶えず、回しているように、汽船の舵機だきも、前のコンパスとにらめっくらをしながら、絶えず、回され調節されていた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
素人運転士の僕だが、白人を克服せんとする意気で、柔腕やさうでにもかかわらず、千五百トンの巨船が自由自在に動き、舵機だきも、スクリウも、僕の命ずるがままになってくれる。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)