興録こうろく)” の例文
箪笥たんすの上に興録こうろくから受け取ったまま投げ捨てて置いた古藤の手紙を取り上げて、白い西洋封筒の一端を美しい指のつめ丹念たんねんに細く破り取って
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
と今度は葉子のほうをまともに見やってほほえみながら、おりから部屋へやを出て来た興録こうろくという船医を三人に引き合わせた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それをそらすような事務長ではない。倉地は船医の興録こうろくまでを手伝わせて、田川夫妻の旅情を慰めるように振る舞った。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
あんな記事が現われてはもう会社としても黙ってはいられなくなって、大急ぎで詮議せんぎをした結果、倉地と船医の興録こうろくとが処分される事になったというのだ。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「おれはまた興録こうろくのやつ……あいつはべらべらしたやつで、右左のはっきりしない油断のならぬ男だから、あいつの仕事かとも思ってみたが、なるほどそれにしては記事の出かたが少し早すぎるて」
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)