うす)” の例文
さて妻が子に食を与え隣家へうすつきに往くとて、子を伴れ行くを忘れた。子の口が酥酪そらくにおうをぎ付けて、毒蛇来り殺しに掛かる。
日がうすつく。山の端かけて空があからむ。その紅もうすく、よどんでしまう。風が私の頬をなぶる。
雪の武石峠 (新字新仮名) / 別所梅之助(著)
水車がゴト/\うすづいてゐる、鶏が餌を捜してクッ/\啼いてゐる、傾斜のゆるい坂路の村の中には、荒物屋があつて、夾竹桃の花が、その庭に真ツ赤に咲いてゐる、導かれたのは村長で
天竜川 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
夕陽が山にうすずくと、錦を織った紅葉の色が、一時にカッと燃え立って、眼のくらむばかりに美しい。れにはぐれた一羽のからすが山の中腹を飛んで行くさえ、夕暮れの寂しさを増して見せる。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)