臍繰へそく)” の例文
命より大事の手箱と言う以上は、男の手紙とか、臍繰へそくりとか、独身女相応のものが入っているだろうと思ってくと、それは大違いで
それが持参金の内であるかどうかわからない、いわゆる臍繰へそくりというものかもしれないが、ともかくごまかした金には違いないだろう。
七日七夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
母が言うので銀子もその気になり、いくらかの手持と母の臍繰へそくりとをまとめて株を買い、思ってもみなかったこの商売に取りついたのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「お蔭さまで、助りますよ」歯の抜けたお婆さんが、臍繰へそくがねの財布を片手でソッと抑えながら、これに和した。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
やれるなら結構だ、といいたいところだが、まず駄目だろう……貧乏が楽しいなどと言いながら、せっせと臍繰へそくりを貯めていたことを、おれは知らないわけではない。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
北洋工船、黒潮漁業の両会社は彼奴あいつ臍繰へそくがねで動いていると云っていい位だ。……その次が現在大阪で底曳大尽そこひきだいじんうたわれている荒巻珍蔵あらまきちんぞう……発動機船底曳網の総元締だ。知っているだろう。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこへゆくとおふくろは涙ぐむだけですからね、涙ぐんで、なけなしの臍繰へそくりを黙って呉れるんだ、いいもんですよ
おれの女房 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
せっせと臍繰へそくりを貯めこんでいたので、こんな楽しいことはないなどといっていたのは、月々殖えていく、貯金帳のたかのことだったのだと、最近になって、やっと理解した。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
先づ、この五年の間に佐原屋がすつかりいけなくなつたといふ噂は嘘ですよ。佐原屋の商賣は主人が死んでいけなくなつたが、身上しんしやうはそんなに痛んぢや居ません。尤も番頭の藤六の臍繰へそくりは溜つてを