膏脂こうし)” の例文
呼吸をするたびに、その胸の線がまるで白鳥の胸のやうに豊かにふくらんだ。膏脂こうしが体内に沈澱ちんでんして何か不思議な重さで彼女自身をものうくした。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)
彼女はあしを厚い毛の靴下で包んだ。膏脂こうしれた彼女の皮膚は痛々しく秋風に堪へなかつた。いつか彼女の手のさきには化粧の匂ひが消えずに残りはじめた。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)
それにれて、彼女の内心からめ出される膏脂こうしが皮膚につややかさを流した。彼女の皮膚が生れてはじめての不思議な滑らかさをつた。処女が母性の肉体に花咲いた様だつた。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)