かぶと)” の例文
孫六はこれをはじめとし、差しつめ引きつめさんざんに射、鎧のそで、草摺りのすきかぶとの鉢下、胸板、脇腹、相手かまわず敵を射た。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼女は、長羅を身辺に引き寄せる手段として、かぶとの上から人目を奪うくれない染衣しめごろもまとっていた。一団の殿しんがりには背に投げ槍と食糧とをにないつけられた数十疋の野牛の群がつらなった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
よろいかぶとや太刀や長柄や、旗さし物などをたずさえて、これも元気よく帰って来て、岩壁の右側からはいって行き、出る者と入る者とが顔を合せると
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
からすの大群が空にあって、堀や野面に散在している、昨日の戦いで戦死した敵の、かぶとよろいを剥ぎ取られた死骸を、ついばもうとして気味悪く啼き立て、舞い下がり舞い上がるのが見てとられた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)