胃痙攣いけいれん)” の例文
盂蘭盆うらぼんの迎い火を焚くという七月十三日のゆう方に、わたしは突然に強い差込みに襲われてたおれた。急性の胃痙攣いけいれんである。
薬前薬後 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その日、丁度宿直に当っていた私は、放課後間もなく、はげしい胃痙攣いけいれんに悩まされたので、早速校医の忠告通り、車で宅へ帰る事に致しました。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蜆ばかり食べさせられて胃痙攣いけいれんを起して転輾てんてんし、論語をひらいて、学而がくじ第一、と読むと必ず睡魔に襲われるところとなり、毛虫がきらいで、それを見ると
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
忘れもしませんが、あの晩吉岡さんは非道い胃痙攣いけいれんを起して大騒ぎいたしました。それからずッとお体が悪るくって、兄の告別式にさえお出になられませんでしたの
情鬼 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
その正面の階段の下の、明るい色彩の花壇の前で、私は改めて一礼すると、車上の人となった。雀のお宿の素峰子そほうしはきのうの朝から激しい胃痙攣いけいれんで顔色がなかった。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
祠は急ににぎわい出した。或る農婦の、一昼夜も断続していた胃痙攣いけいれんが、その御供物おくもつの一つの菓子でぴったりと止んだからだった。そして森の中には白い二本の大旗が立った。
或る部落の五つの話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
猛烈な胃痙攣いけいれんを起こした患者が、モルヒネの注射を受けて、間歇的かんけつてきに起こる痛みのために無意識に顔をしかめながら、麻薬まやくの恐ろしい力の下に、ただ昏々こんこんと奇怪な仮睡に陥り込むように
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
盂蘭盆うらぼんの迎い火を焚くという七月十三日のゆう方に、わたしは突然に強い差込みに襲われてたおれた。急性の胃痙攣いけいれんである。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
滝田君に鮭鮓さけずしの御馳走になり、烈しい胃痙攣いけいれんを起したこともある。又雲坪を論じ合った後、蘭竹を一幅貰ったこともある。実際あらゆる編輯者中、僕の最も懇意にしたのは正に滝田君に違いなかった。
滝田哲太郎氏 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)