緑靛りょくてん)” の例文
肌理きめが荒く、緑靛りょくてんにくすんだところへ、日が映って、七宝色に輝き出すと、うす暗い岩屏風から、高い調子の緑が浮ぶように出る、弱い調子の青が裏切って流れる
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
離れ離れに静かな水を伏せている、函根、御阪、早川連嶺などが、今の雨ですっきりと洗われて、鮮やかな緑靛りょくてん色をしている、愛鷹あしたかを超えて伊豆半島の天城山が、根のない霞のように
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
手がとどきそうになって、岳の右の肩に、三角測量標のあるのが、分明ぶんめいに見える、眼の下に梓川の水は、藍瓶あいびんを傾むけたような大空の下に、錆ついた鉱物でも見るような緑靛りょくてん色になって
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
その大山峻立の底に、落ち窪んでいる平坦地という以外に、森と水の美しさを有している、その緑靛りょくてん色の水と、青々とした森の美しさは、この河内が、かつて湖水であったという事実を
日本山岳景の特色 (新字新仮名) / 小島烏水(著)