素人屋しもたや)” の例文
また万茶亭と素人屋しもたやとの間の路地裏にはルパン、スリイシスタ、シラムレンなど名づけられたものがあった。今も猶在るかも知れない。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
花というのはすでに御承知の、有明荘の崖下なる素人屋しもたやの二階に住む可愛らしい縫子。ズケズケ言う赭熊の肱に手を掛け、さも済まなそうに
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
重吉の方は浅草あさくさ芝崎町しばざきちょう天岳院てんがくいん日輪寺にちりんじという大きな寺のあるあたり、おも素人屋しもたやのつづいた横町に洗濯屋の二階を捜した。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「とめ婆の話では、鶴子は崖下の素人屋しもたやにいる花という縫子おはりにいつもしみじみ身上話をしていたといったナ。……ひとつそのあまを叩いて見るか」
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
飯田町辺いいだまちへん素人屋しもたやの二階へ引移った後、重吉は家にばかり一緒にいては、女に思案の余暇を与える時がない。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ちょうどその時窓の外を、有明荘の崖下の素人屋しもたやに住んでいる例の花という美しい縫子が通りかかった。連れの赭熊しゃぐまの娘とも別れたと見え、何か俯向き勝ちに歩いて行く。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)