篋底きょうてい)” の例文
ただ余の出立しゅったつの朝、君は篋底きょうていを探りて一束の草稿を持ち来りて、亡児の終焉記しゅうえんきなればとて余に示された、かつ今度出版すべき文学史をば亡児の記念としたいとのこと
我が子の死 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
コレ鄙稿ヲ篋底きょうていニ探リ出シテあらた剞劂きけつ氏ニ託スル所以ゆえんナリトイフ。大正十五年丙寅へいいん初春永井荷風識。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こういうと極めて暢気のんきなようであるが、実にその京都遊学の一年間は、精神肉体共に堪え難き苦痛と戦った時代であった。それは何冊かの日記になって今もなお篋底きょうていに残って居る。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
この無題の小説は、泉先生逝去後、机辺の篋底きょうていに、夫人の見出されしものにして、いつ頃書かれしものか、これにて完結のものか、はたまた未完結のものか、今はあきらかにするすべなきものなり。
遺稿:01 「遺稿」附記 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
この無題の小説は、泉先生逝去後、机辺の篋底きょうていに、夫人の見出されしものにして、いつ頃書かれしものか、これにて完結のものか、はたまた未完結のものか、今はあきらかにするすべなきものなり。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふと第三高等学校仏蘭西語の教師に人を要するやの噂ちらと耳にせしかば早速事を京都なる先生にはかりしことありき。これに対する先生の返書今偶然これを篋底きょうていに見出しぬ。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)