端緒いとくち)” の例文
健三の心を不愉快な過去にき込む端緒いとくちになった島田は、それから五、六日ほどして、ついにまた彼の座敷にあらわれた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし自分で自分の先が見えない人間の事ですから、ことによるとあるいはこれが私の心持を一転して新しい生涯にはい端緒いとくちになるかも知れないとも思ったのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時健三は書斎に灯火あかりけて机の前にすわっていた。丁度彼の頭に思想上のある問題が一筋の端緒いとくちを見せかけた所であった。彼は一図にそれを手近まで手繰たぐり寄せようとして骨を折った。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)