突掛つゝか)” の例文
本堂の中にと消えた若い芸者の姿すがたは再び階段の下にあらはれて仁王門にわうもんはうへと、素足すあし指先ゆびさき突掛つゝかけた吾妻下駄あづまげた内輪うちわに軽く踏みながら歩いてく。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
足音あしおとは向ふへ遠退とおのいて行く。三四郎は庭先にはさきへ廻つて下駄を突掛つゝかけた儘孟宗藪の所から、一間余の土手を這ひ下りて、提燈のあとを追掛おつかけて行つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
誰にでも突掛つゝかかりたがる興世王も、大親分然たる小次郎の太ッ腹なところはしやうに合つたと見えて、其儘そのまゝ遊んで居た。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)