禽獣きんじう)” の例文
旧字:禽獸
彼女は暇さへあれば何時いつも沼のほとりにたゝずんだ。彼女ほどに熱情的な愛着を以つて草木さうもく禽獣きんじうに親んだ者はなかつた。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
先生の霊は永くここにあり嗚呼ああ、骨肉は天命終るところの処にまかせ、水にはすなはち魚鼈ぎよべつほどこし、山にはすなはち禽獣きんじうかしむ。何ぞ劉伶りうれいすきを用ひんや。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鶴と家鴨とをくらへるが故に、東京市民を獣心なりと云ふは、——いては一切人間を禽獣きんじうと選ぶことなしと云ふは、畢竟ひつきやう意気地いくぢなきセンテイメンタリズムのみ。
「では初め鳥と獣を眠らしてお目にかけませうか。私はこれを禽獣きんじう降神術と名附けてゐるんです。」
手品師 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
毛唐ニ渡リヲツケテ謀叛むほんノ志アルコト分明ナリ、ヒソカニ軍艦ヲ製造シ大砲ヲ鋳造シテ毛唐ノ侵入ヲ待チ、事ヲ挙ゲテ、ワガ神国ヲ禽獣きんじうノ徒ニ向ツテ奴隷トナサンコトヲ企ツ、言語道断ノ次第ナリ
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)