確固しっかり)” の例文
二人とも安物ながら身綺麗ぎれいな服装をしていたが、女が確固しっかりとしているわりには、男は、なまけ者の様子だった。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
勝気な彼女の反撥心はんぱつしんは、この忘れかねる、人間のさいなみにあって、弥更いやさらに、世をるにはまけだましい確固しっかりと持たなければならないと思いしめたであろうと——
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
母というはおとよといい、言葉の少ない、柔和らしく見えて確固しっかりした気象の女でしたが、僕をしかったこともなく、さりとて甘やかす程に可愛かわいがりもせず、言わば寄らず触らずにして居たようです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
エヴァンスがもう少し確固しっかり眼を覚まして、そして聴取器を掛け、検電機デテクタアの捻じを廻していたら——それは、ほんの片手を動かす丈けの、訳のない動作である——そうしたら
運命のSOS (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
『お前は何を考がえて居るのだ。もって生れた気象なら致方しかたもないが、乃父おれはお前のような気象は大嫌だいきらいだ、最少もすこ確固しっかりしろ。』と真面目まじめの顔で言いますから、僕は顔も上げ得ないで黙って居ました。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)