硫黄島いおうじま)” の例文
丁度硫黄島いおうじまあやうしと国内騒然たる時のこととて、日本では卵が立つか立たないかどころの騒ぎでなかったことはもちろんである。
立春の卵 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
ラジオは硫黄島いおうじまの急を告げていた。話はとかく戦争の見とおしになるのであった。清二はぽつんと懐疑的なことを口にしたし、正三ははっきり絶望的な言葉を吐いた。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
いぜんから高徳こうとくの聞えはあって、後醍醐に瑜伽灌頂ゆがかんちょうの法をさずけ、元弘の元年には、例の“中宮御産ごさん祈祷いのり”と称し、北条調伏ののろいを行ったかどで、硫黄島いおうじま流しとなった豪僧なのだ。
これは硫黄島いおうじまに消えた私のむすこの歌である。
花幾年 (新字新仮名) / 折口信夫(著)