破舟やれぶね)” の例文
沈み果てぬる破舟やれぶねの我にもあらず歳月としつきを、空しく杉の板葺の霰に悲しき夜を泣きて、風につれなき日を送り、心くだくる荒磯の浪の響に霜の朝、独り寐覚めし凄じさ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
若い男が破舟やれぶねの中へ這入はいってしきりに竿さおを動かしている。おいこの池は湯か水かと聞くと、若い男は類稀たぐいまれなる仏頂面ぶっちょうづらをして湯だと答えた。あまりいやな奴だから、それぎり口をくのをやめにした。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)