白犬しろ)” の例文
「何と言ふ色氣のない顏をするんだ。縁先で遊んで居た白犬しろが逃出したぢやないか、手前てめえに喰ひ付かれると思つたんだらう」
そのそばにおなじみの白犬しろが頭を地につけて眼を閉じて眠っている。郵便集配人がズックの行嚢こうのうをかついではいって来る。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「何という色気のない顔をするんだ。縁先で遊んでいた白犬しろが逃出したじゃないか、手前てめえに喰い付かれると思ったんだろう」
刄物——が死骸の側にころがつて居れば、すぐ自殺とわかつてしまひますから、よく馴れた白犬しろひもを變へ、自分の首筋を斬つた苦しい中から
「犬がくわえて行ったんでしょう、白犬しろと来た日にゃ、そりゃ、大変な悪戯だから」
「犬がくはへて行つたんでせう、白犬しろと來た日にや、それや、大變な惡戯だから」
神田明神下のケチな長屋、町名をはっきり申上げると、神田お台所町、もう少し詳しくいえばうなぎの神田川の近所、後ろは共同井戸があって、ドブ板は少し腐って、路地には白犬しろが寝そべっている。
「それに入口には酒屋の白犬しろが聽耳を立てて寢そべつて居りますよ」
「私もそれに氣が附いて居りました、今朝早く若旦那の死んでゐるのを見附けたときから、此通りでございます、ことに、犬小屋に居た筈の白犬しろが、つなを切つて飛出し、血だらけになつて居りました」