癒合ゆごう)” の例文
そしてこの区切りと最外さいがい外皮がいひのところまでの間が人のしょくする部分であるが、この部分は実は本当の果実(中心部をなせる)へ癒合ゆごうした付属物で
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
シャスチナは、多分側火山として噴出したのが、一体の双生児のように、シャスタと癒合ゆごうしたのだろうと思う。
火と氷のシャスタ山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
そっと剥がしてみると、なにか刃物で切ったらしいきずのあとが薄く残っていたが、それはもう五、六日以上を経過したものらしく、疵口も大抵かわいて癒合ゆごうしていた。
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
王の血がフンドの指の間を伝い上って彼の傷へ届いたと思うと、傷は見るまに癒合ゆごうして包帯しなくてもよいくらいになった。……王の遺骸はそれから後もさまざまの奇蹟きせきを現わすのであった。
春寒 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「六度二分。……ハハア……昨日きのうとかわりませんな。貴方も経過が特別にいいようです。スッカリ癒合ゆごうしていますし、切口の恰好も理想的ですから、もう近いうちに義足の型が取れるでしょう」
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今日こんにちまでの経過からして、すべての創口きずぐち癒合ゆごうするものは時日であるという格言を、彼は自家の経験から割り出して、深く胸に刻みつけていた。それが一昨日おとといの晩にすっかりくずれたのである。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
秦の文公ぶんこうの、二十七年、人をつかわしてその樹を伐らせると、たちまちに大風雨が襲い来たって、その切り口を癒合ゆごうさせてしまうので、幾日を経ても伐り倒すことが出来ない。