痘痕いも)” の例文
以上の文句の通りに軽々と疱瘡痲疹の大厄を済まして芥子けしほどの痘痕いもさえ残らぬようという縁喜が軽焼の売れた理由で
年は四十ばかりで、かろからぬ痘痕いもがあッて、口つき鼻つきは尋常であるが、左の眼蓋まぶた眼張めっぱのようなきずがあり、見たところの下品やすい小柄の男である。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
うす痘痕いものある顔は、顴骨くわんこつばかりあらはに痩せ細つて、皺に囲まれた唇にも、とうに血の気はなくなつてしまつた。
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うす痘痕いもの浮んでゐる、どこからふのやうな小さい顔、遥な空間を見据ゑてゐる、光のせた瞳の色、さうしておとがひにのびてゐる、銀のやうな白いひげ——それが皆人情の冷さにてついて
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)