申松さるまつ)” の例文
それが鎮まると教師が児童出席簿を読上げる声。——『淵沢長之助、木下勘次、木下佐五郎、四戸佐太しのへさた、佐々木申松さるまつ………。』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
申松さるまつ親分は、朝田屋の伜の門太郎を縛つて俎橋まないたばしの番所に引揚げて行きましたよ。其處にウロウロして居たんださうで」
「あの男は下手人げしゆにんぢやあるめえ。亥刻よつ半から子刻こゝのつまで俺の家の格子の外で話をして居たと申松さるまつ親分に教へて來るが宜い」
「門太郎の繩を解いてやりましたよ。すると申松さるまつは、此男でなきや、下男の猪之吉に違ひない、猪之吉を縛つても、文句はあるまいな——と馬鹿念を押して居りましたよ」
その次は大川に臨んだ漁師申松さるまつの家で、狹い庭に商賣道具の投網などを干してありますが、當の申松は陽が高いといふに薄暗い家の中に垂込たれこんで、膝つ小僧の中に首を突込み
「逃げも隱れもしませんよ、新し橋の袂で右や左とやつて居る、物貰ひの申松さるまつ
漁師の申松さるまつが住んで居て、中の一軒は空家だ、その空家にはお化けが出るといふ噂があつて、この一年借り手が無い、——昔々、一人者の婆さんが、臍繰へそくりを五貫六百ばかり殘して死んだ相だから