さん)” の例文
十二支組の女首額で、頭の地へ鼠の文身をして居るおさんが誰の手を借りたか、見事に繩を切つて逃げ出してしまつたのです。
さんたる蕾の姿は霰や餅米のやうに小粒で美しい、どこか庭のすみの方に二三株、目立たぬほどに植ゑて置く心がけをすすめるくらゐで、ぢみな花である。
冬の庭 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
あの旦那の飛んだものずきから、洒落しゃれにまた鑑札を請けて、以前のままの、おさんという名で、新しく披露ひろめをしました。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巳之吉とおさんが、平次の情けで目出度く夫婦になつたことや、正業に就いて長生きをしたといふ樣な事は毛頭此處へ書くつもりはありません。
さんを縛り上げて、めさいなんでゐる最中、バタバタと縛り上げて、事情は一瞬の間に解決してしまひました。
「風太郎とはお前だつたのか、さんらう、言ひ分があるなら聞いてやらう」
さんらうはそれに構はず、悲痛に顏をふり仰いで續けました。