玻璃戸ガラスど)” の例文
雨戸の無い家はあけ安く、縁側の玻璃戸ガラスどの内側に引いてある白いカアテンは、川水に光り躍る朝日を反映して、まぼしかつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
その度に三吉は病室の外へ出て、夏めいた空の見える玻璃戸ガラスどのところで巻煙草をふかした。白い制服を着けた看護婦は長い廊下を往来ゆききしていた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
顏を洗つて二階へ戻ると、きれいに寢床はかたづいてゐて、縁側のカアテンをしぼり、玻璃戸ガラスどをあけ放したところに、籐椅子が据ゑてあつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
毎日々々雨の降った揚句で、泥濘ぬかるみをこねて戻って来ると、れた往来はところどころ乾きかけている。店頭みせさき玻璃戸ガラスどはマブしいほど光っている。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
玻璃戸ガラスどのはまった長い廊下に添うた二階の一室に、橋本正太とした札がけてあった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼は浅い谷の手前から繁茂した樹木の間を通して、向うに玻璃戸ガラスどのはまっている先生の清潔な書斎を、客間を、廊下を、隠れて見えない奥さんの部屋まで、それを記憶でありあり見ることが出来た。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)