猶且なほかつ)” の例文
余に至つては、さらに懐疑の方向に一歩を進めて、その言辞を実現し得たる時にすら、猶且なほかつ其誠実を残りなく認むるあたはざるを悲しむものである。
艇長の遺書と中佐の詩 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
(3) 「ゲエテの偉いのはスケールが大きくて猶且なほかつ純粋性を失はないところにある」と言ふ谷崎氏の言葉はあたつてゐる。これは僕にも異存はない。
されば婦人は宇宙間に最も美なるものにあらずや、猶且なほかつ美ならざるべからざるものにあらずや。
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして、嘘だと思はれない範囲で、歩合を胡魔化して報告する。此学校でも、田辺校長からして多少その秘伝をやつてるのだが、それでさへ猶且なほかつしりから四番目だと言はれる。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)