爬行はこう)” の例文
方々がくずれて、谷底へと揺落してしまう、そうしてその分身が、水陸両棲の爬行はこう動物のように、岩を蜿ねり、谷に下って、見えなくなる。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
古焼新焼しんやけと相聯繋れんけいして、左右の濃い蒼翠そうすいの間を蜿蜒えんえんとして爬行はこうし、さながらそこに巨巌きょがんの行進曲を奏でているように見える。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
反逆の魂、執著の業因が創造にって浄化させられるまでの、その過程における心理の探討に外ならぬものである。たとえば盲目の大虫が思量の暗黒の底に爬行はこうする姿を見る。
なるほど上にあげた小動物はいずれも地面の上を爬行はこうする機会をもっているから、こういう俗説も起こりやすいわけであろうが、この説明は科学的には今のところ全然問題にならない。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
目下着々米国で準備を進めつつあるということであるし、ブエノスアイレスでは、英亜両国協同で海底潜水爬行はこうの大探険艇が、同じくこの目的のために、急速建造せられつつあるということだから
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
露営地の外では、細長い爬行はこう動物——この谷の主——東俣の川——が、ねりながら太古の森林の、腐れ香にむせんで、どこまで這って行くことであろう。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)