無骨者ぶこつもの)” の例文
安宅さんと何やら気の利いた常談じょうだんを交わしていらっしゃるらしいのを、私たちだけは無骨者ぶこつものらしい顔をして眺めていた。
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「そんなことをいいましたか? わたしをおじいさんのような無骨者ぶこつものだと……、そして、自分じぶんを、野原のはら女王じょおうだと……。」
風と木 からすときつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
金に眼がくれて町人の娘を貰い、それで得々とくとくたる仁だけあって、物の考えが無骨者ぶこつもののわれわれとは天から違い申す。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
元来が田舎育ちの無骨者ぶこつものなので、人づきあいがまずく、従って異性との交際などは一つもなく、まあそのために「君子」にさせられた形だったでもありましょうが、しかし表面が君子であるだけ
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これなる堀口貞満も、おそらく一時の忿懣ふんまんにまかせ、御立座ごりゅうざのまぎわを騒がせたものと思われますが、無骨者ぶこつもの呶罵どばも、あわれと聞こし召されて、みゆるしあるよう、ひらにおわび申しあげまする。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)