無残々々むざむざ)” の例文
無残々々むざむざと人に話すには、惜いような昨夕ゆうべであったが、いっそ長田に話して了って、岡嫉きの気持をやわらがした方が可い。と私は即座に決心して
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
一本ひともとさびしきにもあれ千本八千本ちもとやちもとにぎわしきにもあれ、自然のままに生茂おいしげッてこそ見所の有ろう者を、それをこの辺の菊のようにこう無残々々むざむざと作られては、興も明日あすも覚めるてや。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
将来有為の男児をば無残々々むざむざ浮世の風にさらし、なお一片可憐かれんなりとのこころも浮ばず、ようよう尋ね寄りたる子を追い返すとは、何たる邪慳じゃけん非道ひどうの鬼ぞやと、妾は同情の念みがたく
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)